Fleur de Noir

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伝説の終わりと始まり

昨日のオリンピック男子SPでフィギアスケート界の伝説、“皇帝”の異名を持つロシアのエフゲニー・プルシェンコがまさかの棄権。 
現役引退を発表した。 

1年前腰の椎間板を人工のものに置き換える手術を受け、腰に爆弾を抱えていたが、SP前日の練習で導火線に火がつき、本番直前の6分間練習でついに爆発させてしまった。
SP当日の朝起きた時には右脚の感覚がなかったとか……。 
今後の彼のスケート人生、というか人間としての生活のために必要な判断だったのかなと思う。 
団体戦で魅せた「ベスト・オブ・プルシェンコ」がアマチュアとしては最後の演技になってしまった。 
体調次第では、開催国ゲストでエキシビジョンに出てくることを願っている。 

紆余曲折の末、異例の“滑走会”を経ての代表選出だった。 
残念ながら個人戦は棄権してしまったが、団体戦でもしコフトゥンが滑っていたら 
最悪の場合ロシアはSP・フリー合計で8点マイナス、かつカナダが2点UPするので、ロシアの団体戦金メダル獲得はならなかったかもしれない。 
結果として男子シングルでのメダル獲得の夢は潰えてしまったが、プルシェンコを選んだロシアの連盟の判断は正しかったと言えるだろう。 
コフトゥンにはぜひ、世界選手権で名誉挽回し、来シーズンのロシアの2枠以上獲得に貢献してほしい。 

そして羽生結弦が歴代最高、前人未到の3桁得点、101.45点を獲得してSPを折り返した。 
プルシェンコは羽生について、 

「今までは私が彼のヒーローだったかも知れないが、今は彼が私のヒーローになっている。」 

とコメントしたとか。 
(ファンのブログやTwitterでしかソースが見つけられなかったので、不確実だが。) 
彼は、4年前のバンクーバーでも4回転を跳んで転倒した高橋大輔に「You are my hero」と声をかけ、「大輔が無難にまとめていたらライサチェクに勝っていただろう」とコメントしており、日本人としては誇らしい限りである。 

さて、いよいよ男子フリー。 
GPFの結果を踏まえると、チャンはノーミス必須、あとは羽生のミス待ち……という厳しい状況で窮地に追い込まれている感がある。 
フリーでトリプルアクセルを2回跳ぶ構成に変えてきたら分からなくなるが、SPでもトリプルアクセルでステップアウトしてるので、それはそれでギャンブルだ。 
一方で羽生は、金メダルに手が届きかけた状況でいかに平常心を保てるかが鍵になると思う。 
4回転サルコウを決め、スピン・ステップの取りこぼしがなければ、恐怖の200点越え、計300点オーバーも見えてきた。 

五輪で日本男子初の金、世界選手権四連覇、五輪二連覇と、新しい伝説の始まりを予感させるSPの演技だった。