Fleur de Noir

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記憶と記録に残る男子シングル

世界フィギア2014は昨夜男子シングルフリーが行われ、羽生結弦が逆転金メダル! 
記録尽くしの大会となりました。 

  • SP3位からの逆転は、新採点方式では初!6.97という点差からの逆転は史上初exclamation (あんなに「逆転可能な点差」って煽ってたのに、すっげー大変なんじゃねーかむかっ(怒り)) 
  • 0.33点差での金・銀も新採点方式以来初。 
  • 羽生結弦が2002年のアレクセイ・ヤグディン以来史上2人目の三冠達成王冠 
  • 日本男子フィギア初の世界選手権ワン・ツーフィニッシュ手(チョキ) 
  • 日本男子フィギア史上2人目の世界王者誕生ぴかぴか(新しい) (羽生は着々と高橋の“日本男子初”の記録に並び、そして追い越してますね。) 
  • 2011年以来、日本男子全員6位以内入賞チャペル 


一方でSP1位の町田樹と同3位の羽生結弦が壮絶な死闘を繰り広げ、人々の記憶にも深く刻まれる大会となった。 
羽生と町田はお互いに、自分の滑りを振り返って「自分のベストの演技ができた。これで負けたら仕方ない」、相手の演技を見て「素晴らしい演技だった。これで負けたら仕方ない」と思ったのではないだろうか。 
表彰式後のインタビューやバックでお互いに贈られる賛辞と爽やかな笑顔がそれを物語っている。 
と同時に、町田はインタビューで「来年は容赦なくぶっ潰しにいきますむふっ」と宣戦布告。
終わった後「冗談だよ」と言っていたけど、半分は本気だったろうな。 

フリー最終グループ2番滑走の町田。 
最初の4回転と2回目のトリプルアクセルは意地で着氷しているように見えた。 
ループではステップアウト。 
しかしそれ以外は非の打ちどころのない演技で、自己ベストを大幅に更新する184.05を記録。 
羽生がこれを逆転するには自己ベストに近い得点が必要で、朝の練習で4TLを転倒というニュースを見ていたので相当厳しいと思っていた。 

しかし、羽生の強靭な精神力は私達の予想の遥か上をいった。 
今季初戦のB級大会以来ことごとく失敗していた4サルコウを意地で降りると、SPで失敗した4TLは修正してきた。 
失敗と言えるのは、エッジエラーを取られたフリップと、少し着氷が乱れた3連続ジャンプのみ。 
191.35という今季2番目のスコアで逆転した。 

羽生の直後がハビエル・フェルナンデス。 
彼自身が試合後の記者会見で、「何よりも観客の皆さんが、日本人の金メダリストの後に滑った僕に対し、あれだけの応援をしてくれた。これは日本でしか見られない光景だと思っているので、ありがたく思っています。」 と語っているが、それも彼の素晴らしい演技あってのものだった。 
正直、ハビエルが滑り終わった後、羽生の金メダルを阻むのは町田ではなくハビーだったか!と思ったほどである。 
今まで彼の滑りには力強さやダイナミックさ、ジャンプが凄い!という印象しかなく、“演技”という面では実は余り好きな選手ではなかったのだが、今回のフリーはコミカルな中にも大人の男の色気を漂わせる滑りでイメージが一変した。
179.51と意外とスコアは振るわなかったものの、詳しくプロトコルを解析するとPCSは羽生に次ぐ2位。 
羽生の演技からは気迫とか彼自身の魂のようなものは伝わってきたが、ロミオとジュリエットの世界観や音楽表現に関しては演じきったとは言い難い。 
むしろハビエルのフリーが、音楽表現においては最も秀でていたのではないかと思う。 

結局勝敗を分けたのは、今シーズン何度も羽生の窮地を救ってきたプログラム構成と“高い基礎点”。 
改めて、選手自身の技術力や表現力と共に、振付師による技の配置やコーチの戦略が如何に重要かということを半年間見せつけられたシーズンだった。 

羽生は、来シーズンからチャンに代わる“絶対王者”として、世界中のトップスケーターから標的にされることになる。 
過去三冠を達成したヤグディンはそのまま引退してしまったので、三冠のタイトルとプレッシャーを背負って闘うのは彼が初めて。 
しかも3年間圧倒的な強さを誇り、昨年のGPFまで誰もその攻略法を思いつかなかったチャンと違い、羽生の攻略法は(可能かどうかは別として)おそらく世界中のコーチ陣が分かっているだろう。 
それはまさしく単純明快。“基礎点を上げる”ことだ。 
既に今シーズン、4回転を3度フリーに組み込んでいる、ハビエルやケビン・レイノルズ(加)、マキシム・コフトゥン(露)などが、他の要素でも高いレベルを揃えてきた時にどんな闘いが繰り広げられるのか……今から来シーズンが楽しみで仕方ない。 

そして個人的にはパトリック・チャンの復活に大いに期待している。 
以前私は、 「おそらくスケート人生で最大の挫折を味わった彼の演技が、今後どう変わっていくのか、変わらないのか、気になるところだ。」 と書いたが、その片鱗はソチ五輪のエキシビジョンで垣間見せてくれた。 
エキシビジョンで滑った全選手のうち、最も私の心に残ったのは高橋大輔だが、チャンの演技はそれに次ぐ素晴らしさだった。 
私がチャンの演技で「もう一度見たい」と思ったのは、この4年間で初めてのことである。 
(ペアやアイスダンスの演技も良かったはずなのだが、カメラワークが酷過ぎてほとんど覚えてない) 
次のオリンピックまで、というのは難しいかも知れないが、ケビンもまだまだ不安定だし、もう1、2年頑張ってほしい。 

さあ、今夜は女子フリー! 
4年ぶりのアベック優勝なるかexclamation & question 
しかし、五輪後の世界選手権は、真面目な日本人にホントに有利だな(笑)。