Fleur de Noir

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結果論から見る羽生結弦の強行出場

GPS中国杯が終わり、検査・治療のために緊急帰国した羽生の検査結果が明らかになった。

「頭部挫創、下顎挫創、腹部挫傷、左大腿挫傷、右足関節捻挫」との診断で、心配されていた脳への影響がなかったのは不幸中の幸いだった。

この検査結果を踏まえて、あの強行出場という選択の是非と、今後の防止策、万が一の時の対策を改めて考えてみたい。

 

●脳震盪はなかった

私も含め「棄権させるべき」という意見を持っている人の多くは、「脳震盪を起こしているかもしれない」という点に言及していたが、結果的には脳震盪ではなかった。

衝突の直後、しばらく起き上がれなかったのは、「鳩尾に入ってしまったので呼吸ができなかった」と本人が語っており、咳込んでいたのもその影響だったのだろう。

むしろ脳震盪の危険が高かったのは、「全てのものが二重に見える」と語っていた閻涵の方だったかも知れないが、こちらも「胸の筋肉とあごに少し問題」がある、ということで脳への影響はなかった。

 

●気になる右足の捻挫

結果論から「棄権させるべきだった」と言うのであれば、右足の捻挫の方が深刻である。

VTRを確認する限り、この怪我は衝突時ではなく、ふらついた状態で演技し、5回も転倒したせいで負傷したのではないかと思う。

衝突時の負傷だとしても、ジャンプを着氷する足なので、悪化させた可能性もあるだろう。

 

NHK杯への出場は?

全治2~3週間、ということでNHK杯の出場はかなり微妙になってしまった。

NHK杯を棄権するとなれば、GPFに出るという目標のために中国杯で無理をした意味もなくなってしまう。

しかしそれでもやはりNHK杯は出場を辞退して、治療に専念すべきと思う。

 

羽生の実力であれば、怪我からの復帰後、調整が万全でない状態でもNHK杯で2位以上に入りGPFへの出場権を勝ち取ることは可能かも知れない。

しかしそうなると、GPFはNHK杯の2週間後、更に2週間後には全日本選手権がある。

怪我明けの選手にとってはかなり過酷なスケジュールで、更に怪我を重ねてしまう可能性も否定できない。

しかしNHK杯を棄権し、2~3週間安静にした上で全日本に向けての調整を開始すればかなりスケジュールに余裕ができる。

タイトルの大きさを考えても、GPFよりも世界選手権を優先させるべきではないだろうか。

羽生は、あの時氷の上で「俺のスケートこれで終わるのか……」とまで考えたという。

競技人生の終わりに比べれば、たった1度GPF出場を逃すくらい大したことではない。

 

次に今後の対策について。

 

●6分間練習のあり方

中国杯で解説を担当していた佐野稔氏は、演技開始前の持ち時間が1分から30秒に短縮されたことで、30秒×12人=6分の余裕が生まれたとして、12人を4人ずつの3グループに分けることを提唱している。

確かに建設的な意見だが、“30秒ルール”自体がTV中継の円滑な進行を目的として設けられたルールだと聞いたので、実際にはどうなのだろうか。

しかし多くのファンは「変な紹介Vを全部やめて、全員分の演技を放送しろ!」とかねてから言っているので、TV放映時間の枠内には収まると思うのだが。

また元選手の中庭健介氏は、6分間練習の時間を10分にする、という意見を述べている。

どちらも検証の余地はあるだろう。

B級大会や国内大会での導入を各国に依頼するなど、試験的に導入してみても良いと思う。

 

●医療体制

今回、中国も日本もチーム・ドクターは帯同しておらず、両選手の治療にあたったのはアメリカとカナダのチーム・ドクターだった、という事実に衝撃を受けた人も多いだろう。

また、大会運営側もドクターを用意していなかった、というのにもびっくりした。

可能性としてはどこの国もドクターを帯同させていない大会もあるわけで、こんな危険極まりないことがあって良いのだろうか。

全ての出場選手がチーム・ドクターを帯同すべき、という意見もあるが、そうすると日本はともかくあまりフィギュアスケートが盛んではなく、出場選手が1人しかいない国は予算的に難しく、ドクターがいないせいで出場できない、なんてことになれば本末転倒である。

やはりISU、または大会の主催者側(今回の場合は中国のスケート連盟?)が大会専属のドクターを用意するのが現実的だろう。

もしくは、GPSにエントリーしている選手の人数に応じて、各国が持ち回り制でドクターを派遣する方法もあるだろう。

そして専属のドクターを置いたからには、このようなアクシデントがあった場合は、ドクターに出場の可否を判断させる権限を与えることも忘れてはならない。

 

今回のアクシデントは、日本での生中継時間中に起こった事故であり、更にオリンピックチャンピオンと地元中国のエースの間に起こった事故ということで、日本はもちろん世界的にも大きな注目を集めることとなった。

これを機に、このようなアクシデントに対する様々な対策が検討・実施されることを願っている。