Fleur de Noir

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『無伴奏ソナタ』を高校生に見せる意義

もう1ヶ月ほど前になるが、演劇集団キャラメルボックス2018 Greeting Theater 『無伴奏ソナタ』の東京公演初日を観劇した。

www.caramelbox.com

2012年の初演版は見たが、正直自分はそこまで響かず、2014年の再演版はスルーした。

しかし今回、ラストで舞台と観客が一体となる“劇場の魔法”を数年ぶりに体感し、舞台熱を刺激された私は『アメリ』を見に行ってしまったほどだ。

これは意図した演出ではなく自然発生的に起こっているもので、起こらない日もある、とのことなので、もしかしたら私が見た初演版では起こらなかったのかもしれない。

今回、長野県中信地区高等学校合同芸術鑑賞会から依頼を受け、さて何を上演すべきか?と考えた末、この作品を選んだとのこと。

つまり長野県の高校生ほぼ全員が『無伴奏ソナタ』を観劇するということで、これはすごいことである。

まず、高校の授業の一環である芸術鑑賞会の公演をキャラメルボックスに依頼するという教員のセンスが素晴らしい。

そもそも高校の芸術鑑賞教室なるものが有意義な時間だった人はどれくらいいるのだろう。

私が高1の時は、某音大の学生が演じるオペラ『カルメン』を見せられたが、「カルメンがセクシーじゃない」と生徒たちに大変不評だった。

2年の時は何を見たかすら思い出せないので、良いものではなかったのだろう。

学校の芸術教室での演目というと、頭の固い教員はとかく高尚な作品を選びがちだが、いくら作品が高尚でも素人に毛が生えたような人が演じるのでは意味がない。

そこはしっかり税金を使って、“プロ”の仕事を魅せるべきである。

また、高尚な作品をプロが演じるとしても、難しすぎて高校生に響かないのではこれまた無意味だ。

それを考えるとキャラメルボックスというのは絶妙なチョイス。

高校生たちにも大変好評なようで、感激コメントがたくさん集まっている。

togetter.com

中でも驚いたのが、今年サッカーインター杯に出場する松本国際高校の生徒たちが、ラジオに流す曲としてテーマソングである「シュガーの歌」を選んでくれたということ。

私が劇場に通い始めた大学生の頃(15年以上前)はまだ「女子供のための劇団」と言われ、“高尚な芸術”からは一線を引かれていたようなキャラメルボックスが、このように評価される時代がくるとは……!

そしてもう一つ、たくさんの高校生たちにこの舞台を見せることは、キャラメルボックスはもちろん、舞台系エンタメ界全般にとっても非常に有意義であり、キャラメルが“劇場の魔法”が作用する作品を選んだことはとても大きい。

少しいやらしい話になるが、高校生というのは劇団や舞台系エンタメ界にとっては“未来のお客さん”である。

今回『無伴奏ソナタ』に感動した高校生たちのうち、何割かはまたキャラメルの舞台に足を運ぶかもしれないし、舞台作品全般を見るようになるかもしれない。

進学や就職で上京したら、サンシャイン劇場に毎公演通うかもしれない。

そして「“劇場の魔法”をもう一度体験したい」という想いは、他のエンタメ作品ではなく舞台観賞を選ぶ唯一にして最大の理由になる。

映画や小説、漫画、ゲーム、音楽(LIVE・コンサートは別)では、「表現の送り手と受け手が同じ空間に共存する」ことによる魔法はかからない。

高校生向けの合同芸術鑑賞会として彼らに有意義な時間を提供し、さらに未来のお客さん候補までGETしたキャラメルボックス

まだ終わっていないが、長野県中信地区合同芸術鑑賞会、およびキャラメルボックス2018 Greeting Theaterは大成功だったと言えるだろう。

ちなみに、『無伴奏ソナタ』で“劇場の魔法”を体験したくなったら、来週末の大阪公演が大千秋楽なのでぜひ。

www.caramelbox.com

余談

以下余談です。

私が今まで体験した“劇場の魔法”中で、最も鮮烈な印象があるのは、『ウーマン・イン・ブラック』。

www.parco-play.com

パルコ劇場プロデュースで何度も再演されており、最新版は岡田将生×勝村政信

私が見たのは、上川隆也×斎藤晴彦の2003年再演版、その印象があまりに強烈だったために、2008年の再々演も迷わず見に行った。

また再演されるかもしれないのでネタばれは避けるが、劇場で魔法にかかった観客は、“幽霊の恐怖”に怯えながら家路につくことになる。

ちなみに、ダニエル・ラドクリフ主演で映画化されており、これはまた舞台版とは違う恐怖がある。

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 [Blu-ray]

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余談2

キャラメルの次回公演は、サマーツアー『エンジェルボール

www.caramelbox.com

飛騨俊吾氏の小説『エンジェルボール』の舞台化です。(私は見てから読む予定です!)

エンジェルボール1 (双葉文庫)

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 主演は、入団18年目、42歳にして初主演となる三浦剛さん!

ちなみに、元・横浜ベイスターズハマの番長、こと三浦大輔氏の実弟です!

野球好きの方はぜひ♪

 

無伴奏ソナタ』に感動したあまり、半ば衝動的に見に行った『アメリ』の感想記事はこちら。

yuhri-rainbow.hatenablog.com