【映画評・ネタばれあり】40代のおっさんと20代のイケメン
『恋は雨上がりのように』見てきました。
実はこれではなく、「まだやってたのかー!」と嬉々として、見逃した別の映画を見に出かけたのだが、映画サービスデーなのに3,000円の席しかなく、でもせっかく交通費を使って映画館に来たのでなんか見るか……何にしよう……となり、数日前からSNSで絶賛されていたこれが、ちょうど時間もぴったりだったので見ることに。
結果として、泣かせどころもあり、深く考えさせられる部分もあり、いい余韻の残るとても良い映画だった。
で、Twitterで私が見かけた感想として印象的だったのは、
「いい年した大人が10代から愛を告白されたときにとる正しい対応はこれだ!」
というもの。
そこについては、私も大変納得したのだが、そういう視点で見ると比較対象として非常に気になるのが磯村勇斗演じる加瀬亮介。
私は原作を読んでないし、映画の中で彼の設定が明示されていなかった(と思う)ので立ち位置がイマイチ分からなかったのだけど、Wikiで見たところ大学生バイトという設定のようだ。
で、こいつが主人公あきらの“秘密”を知ってしまうのだけど、「黙っててあげるからデートしてよ」と要求してくる。
デートの最中も、「女子高生が45のおっさんを好きになるなんてキモイ」とか暴言かましてきて、見てる方としては、「え、これセクハラじゃね?」ってなる。
“イケメン無罪”とか、嘘だろこれ、てなる。
大泉洋演じる店長は、女子高生からの猪突猛進な愛に終始距離を置いた態度を取っていて、大学生のイケメンバイトの方がセクハラをしている。
でもこれ、10代女子を取り巻く環境としては、ものすごいリアリティがあるのではないかと。
キモくて冴えないおっさんだろうがセクハラしない人はしないし、イケメンで若くてもする奴はする。
この問題の根深いところは、この話の主人公は他の人には被害を伝えずに本人を拒否する方向にいくわけですが、もし友達に相談しても、相手がイケメン大学生バイトだと「えー、〇〇さんとなら私もデートしたい!」とか言われて終わる可能性があること。
もしおっさん店長がセクハラするような人だった場合、友達や仲間に訴えたら共感してくれるだろうし、守ってくれるかもしれないけど、セクハラ野郎がイケメンだと女子からの共感を得られにくい。
山口達也の事件の時も「山口達也になら私もキスされたい!」みたいな意見があったけど、よく似た構造だなあと思う。
この加瀬のいいところは、よく相手を見極めているところで、脈がないと悟ってからは主人公の背中を押してくれたりと根はいいヤツ!
けど、ラストで新しいバイトの子に「〇〇してあげるからデートしてよ」と全く同じセリフで口説いてて、あ、こいつ今までこうやって何人もバイトの女子高生食ってきたのかーってなる。
一方女子高生の方も「全然いいですよ~♪」ってむしろ嬉しそうに返してて、加瀬はそれを受けて「普通はこうなるよな~」と呟く。
この“普通”というのがとても厄介。
“普通”の基準は分からないけど、仮に60%(約過半数以上)の人が同意する事柄を“普通”と呼ぶなら、40%は別の意見を持っていることになる。
「イケメンだからって、みんながお前のこと好きだと思うなよ!」と、世の全イケメンセクハラ野郎に言いたい。
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ちなみに、磯村勇斗は『ひよっこ』でのシェフ修業が活きるキッチンバイト役でしたが、演技力は格段にUPしていて素晴らしかった。
「加瀬のことはキモくても、磯村君は嫌いにならないでください!」と言いたい。