ジャパンOPの成績は、シーズンを占う参考にはならない
昨日、ジャパンオープンが行われ、日本チームは2位となった。
しかし1位のチーム・ヨーロッパとの差は0.5もなく、織田、宇野、本田のいずれかが、失敗したジャンプのうちどれか1つでも完璧に決めていれば、日本チームが上回っていた計算になる。
結果は残念であるが、この試合の本来の目的は勝利ではないので大した問題ではない。
オリンピックシーズンということもあり、日本での開幕戦、それもたかだかオープン戦の1試合が終わっただけで、専門紙から一般紙まで大騒ぎである。
そしてそこで報じられている内容のほとんどが、
- 本田真凛は大丈夫なのか
- 本田と三原の得点差
であることに辟易する。
ほぼパーフェクトに近かった三原の得点と、いくつかミスや取りこぼしのあった本田の得点を比較することに何の意味があるのか。
先にも書いたが、この大会の目的は勝つことではない。
マスコミはやたらと“競争”というポイントに着目するが、選手にとっては、より高い得点を目指すべき場でも、ピークを合わせるべき大会でもない。
出場の目的は主に、今季のフリープログラムの確認。
オリンピックシーズンに向けて用意した勝負プロを試合で試す。
得点の出具合はどうか、ステップ・スピンはレベルを取れるか、観客の反応はどうか、観客が入った環境での音楽の響き、ジャンプのタイミングの合わせやすさetc…
これらをGPS本番前に確認すること。
もちろん、チャレンジャーシリーズへの出場も同様の目的もあるが、日本の観客は反応がいいし、国内を拠点にしている日本人選手なら時差の負担もない。
またオープン戦なので、仮に大失敗の演技だとしても、格付けへの影響が少なく、以降の本戦での得点が下がる可能性も低い。
シーズンは長い。
今シーズンで言えば、まずは秋からのGPSと年末の全日本選手権を闘い抜き、オリンピックの出場権を獲得すること。
そして2月のオリンピックで120%以上の力を発揮すること。
ピークを合わせるべきはオリンピックと、その選考会となる全日本であり、今ではない。
10月初旬の段階で、プログラムが完璧に仕上がっていて、一分の隙もない完成形を魅せられたら、逆に心配になってしまう。
本田真凛は、三原との得点差が心配されているが、それ以前に、ミスがあったのにPBを更新したことにもっと注目すべきだ。
本田は、優勝して大絶賛されたUSインターナショナルでもPBを出しているが、ここでの演技もパーフェクトではなかった。
今更新しているPBは単に、シニアに上がったための“30秒の上積み分”である。
彼女の真価はGPSで試される。
クラブの先輩でもある宮原は、ミス・パーフェクトの異名を持つほどミスをしないことで有名だ。
宮原は、ミスのない演技を積み重ねて確実に持ち点を上げ、シニア1年目で全日本女王となり、世界選手権銀メダルを獲得した。
本田が今季、五輪代表となり、かつメダルを狙うためには、順位よりも何よりも、「パーフェクトな演技を繰り返す」方がずっと近道である。
三原が今、本田より14点高い得点を出せるのは、昨シーズンを通してパーフェクトな滑りを何度か魅せてきたからである。
本田も同じことをすれば得点は自然と上がっていくだろう。
ジャパンオープンでの結果如何では、そのシーズンの調子を読むことはできない。
高橋大輔は2011年のジャパンOPで散々なフリーを披露したが、シーズン締めくくりの世界選手権で銀メダルを獲得し、国別では世界歴代最高得点を更新した。
しかし、シーズン成績を占うことはできないが、1つだけ推し量れるものがある。
それは、選手とプログラムの相性である。
2011年のジャパンOPで見た高橋のフリーは、確かにジャンプがボロボロだったが、プログラムの持つ可能性を感じたのは私だけではないはず。
「今はまだ未完成だけど……これは育ったらすごいことになる!」
そう思った。
プログラム自体の力、という意味では、本田真凛のトゥーランドットはかなり良いプログラムではないかと思う。
16歳の本田にはまだ早いのではないかと思ったが、予想以上にモノにしているし、彼女の美しさにもよくマッチしている。
(ストーリーを考えると、序盤はもう少し笑わない方がいい気もするけど。)
だが枠が2つしかなく、そうでなくても競争が熾烈な女子シングル。
マスコミ的には本田が五輪に出場できれば美味しいのだろうが、残念ながらまだ最有力候補とは言えない。
というか、これほど混戦模様の代表枠争いは、多分日本のフィギュア史上ない。
まずは再来週のロシアカップで本格的な戦いが幕を開ける。