Fleur de Noir

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国別対抗戦でメディアが「優勝」と煽るのはいい加減やめてほしい

今季最終戦、国別対抗戦が開幕しました。

今シーズン統括の世界編がどんどん後ろ倒しになっていきますが、国別が終わる前にぜひ強調しておきたいことだったので、記事をUPします。

 

表題にもある通り、国別対抗戦が開催されるたびに、“優勝”の二文字をことさらに強調して煽るメディア(というかテレ朝)の中継に疑問を持っていました。

確かに日本は、2012年に優勝しています。

以下は、2012年優勝当時の日本とライバル国の出場選手と、同年の世界選手権のランキングです。

 

●日本

高橋大輔(2位)、小塚崇彦(11位)

鈴木明子(3位)、村上佳菜子(5位)

高橋成美マーヴィン・トラン(3位)

キャシー・リードクリス・リード(24位)

 

●カナダ

パトリック・チャン(1位)、ケヴィン・レイノルズ(5位)

シンシア・ファヌフ(出場せず)、アメリー・ラコステ(16位)

・メーガン・デュアメル/エリック・ラドフォード(5位)

・テッサ・ヴァーチュー/スコット・モイア(1位)

 

●ロシア

・ジャン・ブシュ(出場せず)、マキシム・コフトゥン(出場せず)

アリョーナ・レオノワ(2位)、アデリーナ・ソトニコワ(出場せず)

・ベラ・バザロワ/ユーリ・ラリオノフ(6位)

・エレーナ・イリニフ/ニキータ・カツァラポフ(5位)

 

●アメリカ

ジェレミー・アボット(8位)、アダム・リッポン(13位)

アシュリー・ワグナー(4位)、グレイシー・ゴールド(出場せず)

・ケイディー・デニー/ジョン・コフリン(8位)

メリル・デイヴィスチャーリー・ホワイト(2位)

 

各強豪国と比較しても、3種目(男女シングル・ペア)で安定した成績を残している日本の優勝は、終わってみれば当然の結果でした。

直前の世界選手権で、全4種目中3種目でメダルを獲っているのは日本だけです。

 

しかし今年はどうでしょうか。

男女シングルのレベルはほとんど変わっていませんが、高橋・木原組の解散もあり、カップル競技2種目が壊滅的です。

対してライバル国はというと、

 

●カナダ

男女シングル→チャンの休養もあり低迷気味、ペア・アイスダンス→TOPクラス

※出場選手の多いシングルが微妙なのでちょっと苦しい

 

●ロシア

女子シングル→TOPクラス、男子シングル→そこそこ、ペア・アイスダンス→共に世界選手権入賞

※これが本当の優勝候補!

 

●アメリカ

女子シングル→共に世界選手権入賞、男子シングル→TOPクラス&そこそこ、ペア・アイスダンス→TOPクラス&世界選手権入賞

※総合力ではロシアより上か!?

 

と、カナダを除けば、4種目全てで最低でもそこそこクラス、ほとんどが世界選手権入賞クラスを揃えています。

松岡修造が「優勝も狙えるんじゃないですか?」と言ってましたが、松岡はともかく荒川さんや織田君は、本気で優勝の可能性を信じているのでしょうか。

確かに、可能性がゼロとは言えないでしょう。

しかし、男女シングルで1位・2位を独占するくらいのことがないと、希望の光は見えません。

加えて2012年とはかなり事情が違います。

オリンピックの正式種目に採用されたことで、3年前に比べると各ライバル国がどこも“ガチで”試合に臨んでいるのです。

3年前はまだお祭り的な要素が強く、国内でも3番手・4番手の選手も多かった。

しかし今年は、休養や怪我などやむを得ない事情がない限りは各国トップクラスの選手が顔を揃えています。

カップル競技の弱さがこれまで以上にウィーク・ポイントとなるでしょう。

そもそもソチ五輪団体戦の時も、「本当にあのやり方で、団体戦のメダルが獲れると本気で考えていたのか!?」と呆れてしまったものです。

 

しかし平昌に向けて全く望みがないわけではありません。

というのも、ソチの団体戦で全4種目で世界トップクラスを揃えていたのは、メダルを獲得したロシア・カナダ・アメリカの3ヶ国のみでした。

今大会では、休養などでカナダの男女シングルは精彩を欠いています。

男女シングルで世界トップクラスを維持する日本は、それほど悪くはないのです。

つまりこのままシングルのレベルを維持し、カップル競技を強化して10組中7位か8位くらいを獲れるレベルになれば、勢力図はかなり変わってくるでしょう。

 

日本のスポーツ報道はいつもそうだと思うのですが、競技に関わらず、選手個人やチームの実力を過大評価し、ラッキーな番狂わせまで獲らぬ狸の何とやら的に計算に入れて、「金メダルも狙える!」「メダル確実!」などど煽る傾向があります。

しかし、ほとんどの場合ではやはり実力通りの結果しか出ません。

よく知らない競技ほど視聴者はメディアの煽りを真に受けるでしょうから、事前の報道通りの結果にならなかった時のがっかり感がハンパない。

 

今大会でも羽生選手が「優勝を目指します」とコメントしていますが(いや、テレ朝に言わされてる感も拭えないのだけど)、選手はどんなレベルの選手でも、メダルや優勝を目指して闘っています。

それをメディアが不用意に喧伝し、市民の盛り上がりを煽ることは、選手のモチベーションに影響するだけでなく、競技そのものの人気をも左右しかねない、危険な姿勢だと思えます。