Fleur de Noir

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感動の女子FS

昨夜のフィギアスケート女子フリーは、全メダリストがほぼノーミスという、史上稀に見る神大会でした。 
しかしまた「疑惑の採点問題」が起こっている。 
果たして本当にそうなのか? 
TOP3と浅田選手のプロトコルを元に検証してみた。 
以下、フリーの順位順に。 


4位:カロリーナ・コストナー(142.61) 

実は銅メダルだったコストナーはフリーだけなら4位だった。 
浅田真央と0.1点差の僅差ではあるが、僅かに浅田を下回っている。 
しかし、彼女の演技は非常に素晴らしいもので最も良かったと思った人もいるだろう。 
実際、スピンとステップは全てレベル4。 
演技構成点の「音楽の解釈」の項目では4人のジャッジが10点満点をつけ、フリーTOP4のうち最も高い得点を獲得している。(確認してないが、多分全選手の中でも一番高いと思う。) 
しかし、音楽が非常にゆったりしたメロディーなこともあり、SPに比べるとスピードがなかったと思う。 
更に決め手になったのはジャンプ構成で、他の3選手と比べるとルッツやフリップなど難しいジャンプは1回ずつしか跳んでいない。 
スピードがなかったせいか、GOEもそれほど伸びなかった。 
それでもSPの貯金もあり、27歳とベテランの彼女が初の五輪メダルを手にした。 

3位:浅田真央(142.71) 

SPの不調からよく1日で気持ちを切り替えてここまで持ち直した。 
FSでは、日本中が涙したのではないかと思う。 
完璧かと思えた演技だったが、2つのコンビネーションの2ndジャンプで回転不足を取られ、ルッツのエッジエラーも取られた。 
なんとGOEでの加点は6.69。 
他の3選手が2桁をマークしているのに対し、圧倒的に低い。 
回転不足などもあるが、滑走順が大きく影響したことは間違いないだろう。 
PCSの伸びもイマイチで、改めてTOP6で滑ることの重要性を感じた。 
しかし、もし浅田がTOP6に入っていたら、FSでこの滑りを魅せてくれたかだろうか。 
「失うものは何もない」という立場だったからこその鬼気迫る演技だったようにも思う。
結果、SP16位から10人をごぼう抜きして6位にまで上げてきた。 
入賞おめでとうございます! 
ちなみに、フリーの得点に彼女のSPベストスコア75.84を足すと、218.55。 
辛うじて銅メダルラインの点数を超えるという得点だった。 

2位:金妍児(144.19) 

特に韓国で、「金妍児の点数が低すぎる」と大変な話題になっているらしい。 
カタリナ・ビットの発言も分からないでもない。 
確かに6点満点方式だったら金妍児が1位だったかも知れないが、80年代に五輪を連覇した彼女は、解説者として新採点方式に対応しきれていないと言わざるを得ない。 
金妍児の敗因は、57.49という“低すぎる基礎点”。 
基礎点だけなら、7位のアシュリー・ワグナーをも下回ってしまう。 
仮に1位のソトニコワが“盛られた”として、ジャッジが盛れるのはGOEとPCSしかない。 
また得点が“不当に低い”としたら、ジャンプの回転不足やエッジエラーがあるが、金妍児はそれらのマイナスは1つもなく、予定された演技構成は完璧にこなした。 
GOEこそ、ソトニコワのそれに2点ほど及ばないものの、PCSは全選手中1位。 
仮に金妍児ソトニコワと同等のGOEを貰ったとしても、基礎点の差で負けていた。 
ちなみに彼女がバンクーバーで金を獲った時の基礎点は、60.90。 
持病の腰痛や体力など、様々な問題で演技構成のレベルを下げたためで、本人も分かっているだろう。 

1位:アデリーナ・ソトニコワ(149.95) 

私は、今回の女王に相応しい素晴らしい演技だったと思っている。 
後半に難度の高いジャンプを組み込み、ミスというミスは3連続の最後の2回転が両足着氷になっただけ。 
回転不足は取られなかった。 
男子シングルで2回の転倒があった羽生が、FSでもチャンに勝ったのと同じ理屈である。
また、SP・FS合わせ全てのスピン、ステップでレベル4を揃えてきたのはソトニコワだけ。 
SP・FS共に高いレベルで揃えており、充分にオリンピックチャンピオンに値する。 

こんなことを書くと大ブーイングを受けるかも知れないが、 
真央ちゃんのFSと同じくらい、ロシア初の五輪女王誕生に感動した。 
もちろん日本人として日本の選手が活躍すれば嬉しいし、メダルが獲れれば嬉しい。 
けれどそれと同じように、一フィギアスケートファンとして、今まで何度挑戦しても手にすることができなかった“オリンピック女子シングルの金メダル”を17歳のソトニコワが手にしたこともとても嬉しい。 
金メダルが決まった瞬間の彼女の表情を見ていたら、真央ちゃんのFSと同じように自然と涙が溢れてきた。 
過去、3度のオリンピックで五輪女王のタイトルに挑戦し、ついに金メダルを手にすることはなかったイリーナ・スルツカヤは何を思っただろうか。
彼女のコメントをぜひ聞いてみたいものである。