Fleur de Noir

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【映画評】風立ちぬ

見てきました。


ちょっと呟いたけど、なかなか今までのジブリにはない雰囲気。

全体の印象として、すっっっっごいフランス映画っぽかった。
いい意味で分かりにくい。
というか、「理解されなくても構わない」「分かるヤツには分かる」という感じの、いい意味での諦めというかぶん投げというか(笑)。

夢と現をかなり頻繁に行き来するところとか(多分、全編の1/3~半分近くは夢の世界を描いている)、あっという間に時空を飛び越えるところとかも(シーンが変わる度に数年単位で時が跳ぶ。戻らないだけまし)、フランスをはじめとするヨーロッパの映画っぽいな。

そしてただただ飛行機が好きで、空に憧れて、作った飛行機は、当然のように戦闘機になって、戦争の道具になるという苦悩も葛藤も、全部まとめてセンチメンタリズムの中に押し込めて丸め込んで、ファンタジーのオブラートにくるんで綺麗な物語にした、その世界観の作り方はさすがだなと。

堀越二郎」という人物の伝記とか、戦前日本の歴史だとかを考えると確かに「ん?」って部分はいっぱいあるけど、「飛行機好きの青年の青春物語」と思えばいい話だな、と。
ただ、関東大震災のシーンはすんごいリアルだった。


あと、日本禁煙学会が問題にしてる喫煙シーン。
確かにすごい。

主人公の友人はタバコが切れたらシケモクに手を伸ばしてるし、主人公の二郎は結核を患う妻の横で吸ってるし、灰皿という灰皿は吸殻でいっぱいだし、教室でも、定食屋でも、家でも、どこでもみんなタバコを吸ってるよ。

でもまあ、男はみんな老いも若きも喫煙してた時代だし、学生とはいえ大学生だから未成年じゃなさそうだし、街で出くわす喫煙のシーンとしてはきっと当時はあんなもんだったのじゃないかなーという印象。
逆に誰も吸ってない方がリアリティがないような気がした。


そしてユーミンが歌う主題歌。

空に憧れて 空をかけてゆく
あの子の命はひこうき雲

30年前に発表された曲にも関わらず、まるでこの映画のために作られたような歌詞のマッチ具合が空恐ろしい。