【書評】輪違屋糸里
読みました。
とにかく新しい。
私は今までの自分の新撰組観が180度引っくり返る程の衝撃を受けた。
何が新しいかって、新撰組の歴史に多分、初めて女性の視点を持ち込んだこと。
女性の視点から語られることで、冷酷無比ではあるがひたすら己の信じた道を突き進む男たちのカッコ良さは、あっという間にどこかへ行ってしまった。
私は今まで読んだ新撰組関連の書物(小説・漫画)、今までに見た新撰組の物語(ドラマ・映画)の中で、あそこまで沖田総司が格好良くないものは知らない。
女の目にかかれば、美青年剣士・沖田総司も、粗野で野蛮で、剣にしか生きる意味を見出せない下らない男。
土方歳三は、自分の目的を果たすためなら、惚れた女さえも人身御供に差し出し、利用し、あまつさえ殺そうとまでするのに、それでも彼女を好きだとのたまう、矛盾する心を抱えた卑怯な男。
しかし女の目にかかると、乱暴者で傍若無人で酒豪の芹沢鴨は、純粋すぎるほどに純粋で、真っ直ぐで、生きるために嘘がつけない、不器用なだけに切なすぎる男に変わる。
この小説の中で最も女心をくすぐる男は、なんと言っても芹沢鴨なのである!
これを衝撃と言わずしてなんと言う!?
男とはかくも愚かしく、それ故にこそ、かくも可愛い生き物なのか……。
というのが、この小説に登場する女たちに共通する真髄か。
そしてこの小説に登場する5人の主要な女たち、糸里、吉栄、おまさ、お勝、お梅は、男の身勝手に翻弄され、振り回されながらも、自らを縛っていた「男と女」の鎖を解き、自らの意志と力で運命を掴み取っていくのである。
例えそこに待つものが、死であろうとも……。