新時代到来の予感!ネイサン・チェンは王者の孤独に耐えられるか!?
お久しぶりです。虹風憂璃です。
昨秋から本業が忙しくなり、全くブログを書く時間が取れなかったが、主要大会はもちろん全て視聴していた。
特に先日の世界選手権では、ネイサン・チェンが前人未到の得点を叩き出し、羽生からネイサンへと王者交代を予感させる結果となった。
今世界を見渡しても、彼と対等に渡り合える、彼と同世代の選手は見当たらない。
ネイサンより1つ上の世代である羽生が、打倒ネイサンの一番手であることは変わりないが、現役生活を終えるまではまだ分からないが、年齢的に考えて羽生の競技人生のピークはもう過ぎたと言っていいだろう。
仮に今後4回転アクセルを着氷することがあったとしても、演技全体としてそれも含めてパーフェクトにまとめる力は、右足の状態を考えても残っていないのではないか……。
今のところ、彼のピークはソチと平昌の間の3年間だった……と私は考えている。
しかしその間、羽生は五輪こそ連破しているが、世界選手権では2回もハビエル・フェルナンデスの後塵を拝した。
羽生が体調面では万全の状態ではなかったとは言え、記録の上では“絶対王者”ではなかった。
私はそれこそが羽生を4年間絶対王者たらしめた理由だと思っている。
同門で最大のライバルであるハビエル・フェルナンデスが、羽生の登りつめた高い高い山を必死に登り、彼と同じ高みから同じ景色を見た。
そのことは少なからず羽生を王者の孤独から救い、絶対王者であり続ける精神的ストレスを軽減しただろう。
また、宇野昌磨も羽生より上に立つことはなかったけどかなり近いところまではいったし、ネイサンは五輪前にも何度か羽生の上に立っている。
羽生が平昌で2連覇を達成できたのは、競い合うライバルの存在が王者のメンタルを和らげたから、というのも理由の1つだろう。
さて、ネイサンが先日叩き出した323.42という得点は、他選手がちょっと簡単に追いつけそうにない。
羽生ですら世界選手権で初めて300点を超えたというのに、20点以上も上回っている。
仮に羽生のSPとFSの自己ベストを足しても316点ほどなので、もう一つプログラムのレベルを上げないと勝つのは難しいだろう。
ネイサンと並ぶジャンパーであるボーヤンがある意味では最も王者に手の届く存在であるが、そのためにはGOEとPCSの爆上げが必要である。
PCSの平均点を9点台まで上げるのは、やりようによっては1シーズンで可能なので、北京には間に合う。
ただ、そのためには、1シーズンをほぼノーミスで乗り切ることが必要不可欠となる。
(PCSの上げ方については別途考察したい……。)
ネイサン・チェンが次の五輪で金メダルを獲るには、「完璧に滑れば誰も追いつけない」という絶対王者の抱える孤独に打ち克つことが必要となる。
皮肉なようだが、他に王者の孤独に寄り添える、彼と肩を並べる選手が現れることが、金メダル獲得の手助けとなるかもしれない。
かつてパトリック・チャンは、バンクーバーからソチまでの3年間絶対王者として君臨し、彼に追いつける者はいなかった。
ソチ五輪直前のGPFで羽生に負けて以来、優勝から遠のいてしまったのは、“息切れ”だったのではないだろうか。
あの3年の間に、もし彼と対等にわたりあえる存在がいたならば、新進気鋭の若手の台頭にもう少し粘れたのではないだろうか。
一方、ハビエル・フェルナンデスが引退した今、王者の地位から堕ちかけている羽生の孤独に寄り添える者も見当たらない。
羽生とネイサン、孤高の二人同志の対決とあらば、ある意味ではフェアかもしれない。