テサモア無双
先週末、NHK杯が閉幕した。
今大会、宮原の復帰戦とか、羽生の突然の欠場とか、日本人的なトピックも数多くある中、私が最も印象に残ったのは……、
テサモアが無双すぎる件。
テサモア=テッサ・バーチュー&スコット・モイアー組は、カナダのアイスダンスカップル。
アイスダンスは、シングルなどに比べれば選手寿命の長い種目ではあるけど、それでも彼らはバンクーバー五輪の金メダリストである。
年齢に関係なくスポーツ選手の世代を五輪で区切るとすれば、2世代前の選手ということになる。
ちなみにバンクーバーのメダリスト全12組の現状を見てみると、男女シングルの6選手(ライザチェック・プルシェンコ・高橋、金妍児・浅田・ロシェット)は既に引退。
ペアの銅メダリスト、サフチェンコ&ゾルコビー組は、サフチェンコがパートナーを変えて未だ現役(ゾルコビーはソチ後の世界選手権で引退)。
今シーズンGPSで2戦とも2位に入っている。
ちなみに、メダリストではないが、バンクーバー5位のペアだった張昊も、パートナーを変えて33歳の今も現役である。
アイスダンスはバンクーバー銀メダルのメリチャリ(メリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイト組)は、明確には引退宣言をしていないが多分現役復帰することはもうない。
銅メダルだったロシアカップルは二人とも引退している。
つまり、バンクーバー当時と同じカップリングで今も、しかもずっと第一線で活躍を続けるのはテサモアだけ。
加えて、今から引退後のアイスダンス界を憂えてしまうのは彼らの無双ぶりである。
復帰して以降、参戦した全ての大会で優勝しかしていない。
そもそもバンクーバーからソチまでの4年間、アイスダンスではテサモアとメリチャリの2組が2TOPを争い続け、ソチでも金と銀が入れ替わっただけ。
4年間全く世代交代していないし、彼らと対等にわたりあえるカップルが未だにメリチャリしかいない。
ソチ後、2TOPが表舞台から姿を消し、代わって絶対王者の座に君臨したのが
フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組、通称パパシゼ。
2連覇した世界選手権での演技は本当に素晴らしかったし、平昌でテサモアの最大のライバルと目されるのは間違いなく彼らである。
しかしフリーのPBこそパパシゼがテサモアを上回っているが、昨シーズンのテサモア復帰以降、直接対決ではパパシゼは1度も表彰台の一番高いところに立てていない。
今季初の直接対決はGPFになると思われるが、
少なくともアイスダンスに関しては完全にオリンピックの前哨戦となるだろう。
そして2017-18シーズンの2TOPと三番手以降のカップルの間には、割と高くて厚い壁がある。
テッサ・バーチューはNHK杯の優勝インタビューで「最後のNHK杯になると思う」と発言しており、平昌後には完全引退すると思われる。
順当にいけば無双状態のまま3回目の五輪でもう一度金メダルを獲って引退し、伝説のカップルと化すだろう。
彼らの引退後、世界レベルでアイスダンス競技の進化が停滞してしまうのではないかと、オリンピックが始まる前から憂えている今日この頃である。