円熟期を迎えた二人のベテラン
お久しぶりです、虹風憂璃です。
オリンピック・プレシーズン始まりましたね。
日本シリーズとフィギュアが裏かぶりで、TV観戦に大忙しの方もいるかと思います。
さて、スケートアメリカ女子シングル終了しました。
今大会は、女子シングル現役では最年長?となる浅田真央、そして同世代のアシュリー・ワグナーが個人的に注目です。
20代半ばを過ぎ、共に円熟期を迎えた二人。アシュリーは、11-12シーズンに四大陸を優勝したシーズン、「ブラックスワン」で世界選手権の金メダルを逃したことが本当に残念だったのですが、まさか20代半ばで競技人生のピークを迎えるとはとても思っていませんでした。
昨シーズンの世界選手権で初のメダルを獲得。
ジャパン・オープンの演技も良かったし、一時期はグレイシーの追い上げにもう引退かと思っていましたが、「まだまだ全米トップの座は譲らないわよ!」と言わんばかりの貫禄です。
元々良い演技をするのに、回転不足を取られまくって損をしていましたが、細かいところを一つ一つ見直し、修正してきた結果が今、実を結んでいるのでしょう。
課題はこの調子を来シーズンまで持続できるかどうか……。
アメリカ女子は、グレイシーの他、ポリーナ・エドモンズ、今回2位に入ったマライア・ベルなどライバルがたくさんいます。
長洲未来も再び調子を上げてきました。
昨シーズン、そして今が“競技人生最大のピーク”なのか、未だ“上り調子の途中”なのか、今後の進展が気になるところです。
来年までこの調子をキープできれば、2度目のオリンピック、そして初のメダルも夢ではなくなってきます。
対して浅田真央。
はっきり言って体力・技術の面ではもうピークは過ぎたかもしれません。
SPの構成を見ても、現在女子シングルトップクラスでは、ルッツかフリップを含む3-3、ルッツかフリップ、ダブルアクセル、という構成が常識ですが、彼女の演技構成はそれより一段、二段劣ります。
トリプルアクセルを入れてもです。
そもそも彼女は、セカンドジャンプに3Tの選択肢がほぼないという珍しい選手です。
トゥループ、苦手なんでしょうか?
これはかなりジャンプ構成を決める上で厳しくなってきます。
思うにジャンプに関してはやはり浅田真央は、1つ前の世代の選手なのでしょう。
彼女と同世代の選手たちは、ジャンプを得意とする選手でも3-3を跳ぶ選手はそう多くありません。
特に浅田や安藤美姫のように、トリプルアクセルや4回転といった大技を持っている選手は、そちらにエネルギーを使うのでコンボは3-2が多い。
安藤美姫は、途中でシフトチェンジしていますので、4回転はほぼ跳ばなくなってしまいましたが。
(当時の映像を見るとルッツ-ループの3-3を跳んでますが、あの頃あれを跳べたのは彼女だけだったのでは……。)
その流れを変えたのは金妍児です。
彼女は大技はない代わりに質の高い3-3を跳び、浅田を上回って金メダルを獲得しました。
当時は、男子も「4回転よりも3回転をクリーンに」という流れだったので、男女ともに大技よりも完成度を求める風潮が高まっていましたね。
今はまた時代が巡り、“3回転のクリーンなジャンプ+大技”という時代に男女ともに突入しています。
男子は、フリーの8本のジャンプのうち半分近くが4回転を含む、という選手も1人ではなくなってきました。
タクタミシェワに加え、日本の紀平梨花もトリプルアクセルを跳び、これからますます跳ぶ選手は増えていくと思います。
技術(ジャンプ)に関しては世界のトップから少々遅れをとっている今の浅田ですが、演技面では休養・復帰を経て一つのゴールというか到達点に達したと感じています。
レベルに関わらずあのステップはショート・フリーともに素晴らしい。
正直、ソチまでは浅田がああいう演技を魅せる選手に成長するとは全く思っていなかった。
ソチで見せたあのフリーは、今にして思えば浅田が掴んだ“何か”の片鱗を掴みかけていた瞬間だったのではないかと。
スケートの、そして世の中の酸いも甘いも噛み分け、今までの人生で無駄なものは一つもなかったと思わせる演技です。
だからこそ、浅田にはもう、日本のフィギュア界も、メダルも、オリンピックの枠も、何も背負わずに自由に滑って欲しい。
私たちは彼女に何かを背負わせることを止めて、彼女の演技を少しでも多く見られることに感謝すべきだと思うのです。
それが、10年間日本の、そして世界のフィギュア界を牽引してきたベテランへの最大限の贈り物になるのではないでしょうか。