振付師・鈴木明子の正念場
鈴木明子の振付デビュー作が話題になっている。
クラブの後輩、本郷理華に授けたSP シルク・ドゥ・ソレイユ「キダム」。
「彼女の長い手足を殺さずに、魅力を引き出す」
ことを最大限に考慮して作られた、まさに本郷のためのプログラムと言って良いだろう。
これが本当に処女作なのか!?と思われるような、選手の魅力を引き出し、伸ばし、伝えるプログラム。
更に、往年の鈴木明子を髣髴とさせるような、スピンでの手の使い方、ステップやシークエンスでの目線の流し方と、振付師の個性も十二分に組み込まれている。
スケート関係者の間でも話題になっているだろうことは想像に難くない。
(あまり話題になっていないが、ジュニアの新田谷凛選手にもSPの振付をしている。)
ところが、同じく本郷理華のフリー「リバーダンス」を前にしては、鈴木のプログラムの良さも霞んでしまう。
そこはやはり、キャリアの差というか、日本人振付師の第一人者である宮本賢二にはまだまだ及ばないところがある。
とはいえ、昨季のカルメンと同様、「リバーダンス」の演技指導にも鈴木が関わっているだろうから、そこから盗める部分はたくさんあるだろうし、アシスタント的な立場として指導していくことで更なる伸びしろも期待できる。
鈴木明子にとって、振付師としての正念場はきっと今シーズン終了後にやってくる。
今季の本郷のプログラムを見て、多方面から振付の依頼が来るだろう。
鈴木にとって本郷は、子供の頃から同じリンクで練習を共にしてきた後輩で、彼女の魅力も欠点も、全て……とは言わないがほぼ把握しているだろう。
しかし来季以降振付けることになる選手の中には、初めてまともに会話をする選手や、試合会場でしか見たことのない選手もいるはずだ。
彼ら・彼女らへの振付を手掛けるとき、振付師・鈴木明子の真価が問われる。