Fleur de Noir

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二つの嬉しい誤算――Cup of China 2015

いよいよ浅田真央が本格復帰となる中国杯が始まりました。

昨日の女子SP、私個人としては、予想というか希望というか妄想してはいたけれど、まあ難しいだろうと思っていた2つのことが現実となりました。

 

1つは本郷理華が下馬評(というほどのものでもないけれど)を覆し、PBを更新して浅田真央に次ぐ2位につけたことです。

確かに今季のプログラムはSP・フリーともに素晴らしく、私としては日本女子の中でもイチオシだったのですが、いかんせんツキがない。

GPS2戦どちらも、他の出場選手が強豪揃いでおよそメダルを獲れる気がしないのです。

第一戦、中国杯浅田真央に加えロシアのラジオノワとポゴリラヤ。

第二戦、ロステレコム杯には、メドベデワ・ラジオノワ・ソトニコワとロシアっ娘が3人。

本郷がどんなに良い演技をしても、ちょっと難しいんじゃないかと思っていました。

 

ところが中国杯ではまさかのロシア女子2人が不調……。

彼女たちの調子も心配ではありますが、本郷にとってはラッキーでした。

やはりこの子は“持ってる”のかなあ。

とはいえロシアの2人、特にラジオノワの不調も気がかりです。

身長が7cmだったかな?伸びたとのことで、やはり重心が変わったのでしょう。

クリーンに決まったジャンプが1つもありませんでした。

メイクのせいもあるとは思いますが、なんだか顔色も悪く、やつれて見えたのが心配です。

本郷にはなんとか2位に入ってほしいけど、ロシアの2人も良い演技を魅せてほしいです。

 

そしてもう一つの誤算。

浅田真央が、ここにきてまさかの大輪の花を咲かせ始めました。

もう、ステップの一蹴り、ジャンプ1つ1つ、演技の全てが1年半前の浅田とはまるで別人です。

ソチ五輪後の1年の休養で、それまでの苦しいことや様々な呪縛から解き放たれ、2005-06年のシニアデビュー当時の天真爛漫さを、そのまま純粋培養して魅力的な大人の女性に成長したような……。

 

浅田真央を縛り付けていたもの……それはやはりトリプルアクセルだったように思います。

シニアデビュー以来、その大技は彼女の演技を助けてもきましたが、それ以上に苦しめることの方が多かった気がします。

彼女の口から、“トリプルアクセル”の名をきかないシーズンはありませんでした。

演技構成から跳ぶジャンプの種類まで、プログラムの全てがトリプルアクセルを基準に構成されていた、といっても過言ではないでしょう。

そのことによって、トリプルアクセルも他のジャンプも跳べなくなるという悪循環には、実は本人も、周囲も、ファンも薄々気づいていたのではないかと思います。

一方で私たちには「真央ちゃんのトリプルアクセルが見たい!」という強い希望がありました。

良くも悪くも空気を読む選手ですから、彼女のトリプルアクセルへのこだわりには、周囲の想いもたくさん乗っていたのではないでしょうか。

 

ところが1シーズン休養したことで、全てがフラットになった。

トリプルアクセルも3-3のコンビネーションも、スピンもステップも、表現力も、全てが浅田の中で同格になったような……。

今季、浅田の口からはとりたてて“トリプルアクセル”を強調する発言はきかれません。

むしろ、「大人の演技」「今の技術に合わせる」「3回転-3回転」についての方が、会見で話す機会は多いように感じました。

そしてトリプルアクセルへのこだわりを捨てたら、トリプルアクセルを含め、ジャンプの調子がかつてないほど良くなった。

皮肉なようですが、25歳を過ぎてから技術的な進歩を遂げるのは、アスリートとして相当の努力を要すると思います。

その努力ができるのも、「スケートが好き」という気持ちを再認識したことが大きいでしょう。

先ほど「2005-06年のシニアデビュー当時の天真爛漫さを、そのまま純粋培養して」と書きましたが、今にして思えばトリノからソチまでの8年間は、浅田にとってとても苦しいものだったのではないでしょうか。

シニアデビュー時にGPF優勝を攫った時のような笑顔は、ソチまでの8年間でほとんど見られなかったような気がするのです。

もちろん、その8年があったからこそ今があるのですが、15歳の頃に思い描いた自身が理想とするスケーターに、今までの競技人生で最も近づいているのではないかと思います。

 

そして浅田自身も目指した「大人の演技」。

かつての浅田には見られなかった目線の使い方や、ステップの“溜め”が、洗練された大人の色気を醸し出していました。

前半魅せた“溜め”のあるゆったりした滑りが、終盤で加速していくステップをより引き立てていたと思います。

10代の早いうちにデビューしたロシアっ娘たちも「大人の演技」を既に見せていますが、それよりも一回りも二回りも厚みのある、25年分の人生の年輪を積み重ねた「大人の演技」を魅せてくれています。

今季の浅田真央、とても楽しみです!

まずは今夜の蝶々夫人に期待しましょう。