Fleur de Noir

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文化人類学

大学時代、専門課程以外のいわゆる一般教養で最も興味深く、今でもよく覚えている授業の一つが文化人類学である。 
その先生は毎年テーマを変えて東女で文化人類学の講義を持っていたようで、私が受けた年度のテーマは世界各国の結婚制度であった。 

その授業で特に印象に残った、日本では考えられないような制度をいくつか紹介する。 
15年以上前の記憶で今資料も何もないので、多少の記憶違いや抜け漏れはご容赦を。 

●死婚・霊婚
死人と結婚する、または死人同士を結婚させる、というもの。 
愛する人と結ばれなかったとか、そもそも結婚できなかったとかが原因で地縛霊になったり遺族に祟ったりなどしている場合に行うらしい。 
鎮魂のための結婚といったところか。 
具体的には、それぞれの墓から遺骨を掘り出して儀式をした後、改めて2人の遺骨を一緒の墓に埋葬し直す。 
生きている人間と死人を結婚させる場合も、やはり遺骨を掘り出して儀式を行うとか。 
生贄?的な結婚相手は、当人同士がかつて恋人同士だった場合などを除けば、 
遺族が金を積んで探し出すという。 
(娼館に売るよりまし、という感じで貧乏な親が子供を売るケースが多い。) 
確か数年経てば一応契約解除?みたいになって、普通に結婚できたような。 

●一妻多夫
一夫多妻はイスラム教圏で割と普通にあるが、女系での繁殖を行う種族で一妻多夫制もまだ残っているとか。 
面白いのは、妻である女性が妊娠した場合、夫たちは皆贈り物をする。 
贈り物をすることが「その子供は俺の子だ」という意思表示になり、父親の権利が発生する。 
実際の父親が誰かってことは割とどうでもよく、みんなで育てるみたいな感じで、夫同士は仲がいい場合も悪い場合もあるとか。 

●女性婚
その名の通り、女性同士で結婚する。 
やはり女系で繁殖を行う種族で行われている。 
実際の子作りは、結婚相手となる女性の兄弟や父、伯父・叔父など血縁関係のある男性と行う。 
けどあくまでも結婚相手は女性なので、男性は単なる種馬的な扱いらしいが。 

で、ここまでは実は前置き。 
何でこんなことを思い出したかっていうと、昨日発表された故高円宮様の次女・典子様のご婚約である。 
女性皇族が一般人と結婚すると皇籍から抹消して新たに戸籍を作り、一般人となるため皇族が減ってしまう。 
現在、若い世代の皇族が悠仁様以外全員女性であり、放っておくと大変なことになるということで、女性天皇の容認、女性宮家の創設などの議論がなされている。 
悠仁様が生まれたことで女性天皇に関しては60年くらい結論が先延ばしされるだろうけど、女性宮家についてはここ10年以内くらいには解決しなければならない問題だろう。 

で。 
その文化人類学の先生は、女性天皇の問題は皇族が女性婚を取り入れることで解決する、と言っていたのである。 
彼女の主張はこうだ。 
女性天皇を認めた場合、女性天皇とその結婚相手の男性とではどちらが偉いのか、という問題が生じる。 
普通に考えれば天皇である女性の方が偉い、はず。 
しかしそれは、日本古来の家父長制を基準とする家族観に反する。 
だから、頭の固い年寄りの議員が女性天皇制に反対している。 
女性婚を取り入れれば、女性同士だから天皇である女性の方が偉くても特に問題は生じない、とまあこんな内容だった。 
かなり乱暴な話だが、一応筋は通っている。同意できるかは別として。 
(ちなみにイギリスでは、公私を完全に切り分けることでこの問題を解決したらしい。)

余談だが、その文化人類学の授業で牛を育てる民族の話があった。 
その牛と結婚がどう絡んでくるのかはよく覚えてないのだけど、 
ある地域では子供(確か男の子)が生まれると、その子と同じ年に生まれた牛を1頭飼う。 
(魔女宅で、女の子が生まれると黒猫を飼うのと同じような感じだと思う。) 
そして子供と一緒に育て、子供が物心ついてからは自分で世話をさせる。 
すると子供たちはみんな自分の牛を持っているので、牛の飼育が子供たちの共通の話題となる。 
日本の小学生が「俺、このゲームここまで進んだぜ!」という話をするのと同じような感覚で、「俺の牛はここまで大きくなったぜ!」とお互いに自慢しあうとか……。 

あと、これもこの日記の本題とは関係ないけど、この結婚自体も歴史的に見るとなかなか面白い。
※2019年8月4日追記

この記事書いたの、5年前なんだけど、女性宮家の話が当時から全く進展していない……。

しかも小室さんの諸々で余計にブレーキがかかっているし。

一方で、“女性天皇”の議論の方が先に進みそうなのは意外。